修業論(連載1/3)
―福岡さんの修業論―
分子生物学者の福岡伸一氏は分かりやすい学習の進み方を説いている。
1つの事を習得し一流、プロといえるまでには1万時間を要するというのです。
1万時間。日数では416日。寝ることも休むこともせずに続けた時間です。
こんなことは私たちにできるわけがありません。では現実的に、しかしこれもプロ的な束縛時間で365日、1日に1時間練習するとなると約28年弱です。体調、社会的付合いなどを考慮せずに生活することは不可能なのでこの数字も気が遠くなります。
しかし福岡氏のいう1万時間の根拠を追及せずに、認めれば30年近くかかって一流になるというのです。体育的、技術的いろいろな習得技術があります。
私の身近な武道、剣道でみましょう。
剣道では修業段階がある1級から初段、8段まであります。初段取得から1年経って2段取得資格が生じます。
2段は初段取得後、2年という具合です。
1級資格が生ずる中学1年の12才から1回も受審に失敗がないとすると8段合格までの最短年は48才である。36年かかっている。福岡氏の1万時間に添った結果となっています。
―剣道の例では―
よく剣道有段者というと「凄い、格好いい」などと軽口が入ります。これもその道に入っている人からすると、とんでもない誤解があります。
剣道では3段までは区市町村の剣道連盟が主催、4〜5段は都道府県、6段以上が日本という風になっています。したがって受審者の範囲も競争倍率も断然差がついてきます。
審差員の保有段数も人数も異なります。合格率初段は100%近く、8段は1%。したがって、有段者といっても極端な差があります。
さらに技量を維持するためには、極端にいえば1日、1時間の稽古を継続しなければなりません。日曜日にまとめて4時間稽古して、あとは休みというわけにはいきません。1日休めば、取り戻すのに2日かかります。
ですから高校時代に3段をとったといっても、50才まで竹刀を持たなければほぼ初心者と同じです。いま竹刀を持って稽古をして3段というところに真実味があります。
いまが問題なのです。剣道でいえば福岡氏のいう1万時間論に7段以上の高段者はそった修業を積んだ結果といえます。次回は世阿弥の修業論に触れます。 |