平成23年度 公営企業会計決算特別委員会(第2分科会)の記録
(速記録よりの抜粋)

第2分科会 第2号(平成24年10月22日)

下水道局 石神井川悪臭の浄化対策

和田委員

 私は、東京都の下水道事業経営計画二〇一〇をもとにいたしまして、合流式下水道の改善、また、具体的には王子第二ポンプ所などの改善について質問をいたします。
 東京は、かつて隅田川が大川と呼ばれていたころから、まさに水の都というべきたたずまいを見せておりました。江戸のまちを縦横無尽に川が走っておりまして、その光景は、まさに江戸の風物詩でありました。
 明治になりましても、いわゆる文豪といわれております幸田露伴は「水の東京」という小さな小論の中で、このように書いております。
 その冒頭は、「上野の春の花の賑ひ、王子の秋の紅葉の盛り、陸の東京のおもしろさは説く人多き習ひなれば、今さらおのれは言はでもあらなん。たゞ水の東京に至つては、知るもの言はず、言ふもの知らず、江戸の往時より近き頃まで何人もこれを説かぬに似たれば、いで我試みにこれを語らん」という形で冒頭、幸田露伴は「水の東京」の文章の筆をとっているわけであります。
 それから、少し進みますと、具体的に荒川ですとか、あるいは隅田川、赤羽川などなど、具体的な川名を挙げて、それの具体的な表現をしたわけでありますけれども、石神井川についてはこう書いてあります。
 「石神川を収めてまた東に向かつて去る。石神川は秋の日の遊びどころとして、錦繍の眺め、人をして車を停めて坐に愛せしむる滝の川村の流れなり。水上は旧石神井村三宝寺の池なれば、正しくは石神井川といふべし。この川舟楫の利便は具へざれども、滝の川村金剛寺の下を流れて後、王子の抄紙場のために幾許かの功を為して荒川に入るなり」と、こうなっております。
 まさに今、私どもが身近に石神井川を見る風景を露伴は、この文章は明治三十五年の文章でありますけれども、具体的に「水の東京」というタイトルで、東京と水、すなわち下水道について書いているところであります。
 さて、こういうような情勢を受けながら、今日的に私どもの東京都の経営計画二〇一〇を見ておりますと、この中で、いわゆる合流式、分流式という下水の手法が出されておりますが、区部においては、おおむね八〇%が合流式、そしてまた、分流式が二〇%。多摩においてはその逆で、二〇%が合流で八〇%が分流というような数字になっているようであります。
 この分流、合流の長所短所については、今ここでは述べませんけれども、現実的に区部では八〇%が合流式で進められております。
 その長所は一点、すべての下水を一つの管におさめるものですから、経済的、また迅速に下水が拡大、普及できるという利点で、今日まで東京の下水道政策というのは立派に大都市の中でも世界に伍して、ぬきんでた成果を上げてきていると私は思っているんです。
 さて、このように長所のある合流式でありますけれども、私どもの地元の石神井川などでは、平成二十一年などに新聞やテレビで大変騒がれる事態になるような光景もありました。
 下水道局では、経営計画二〇一〇に基づいて、合流式、あるいはその補完的な分流式をうまく使い分けているわけでありますけれども、この下水道事業の経営計画二〇一〇を前提にして、次に何点か質問する次第であります。
 この経営計画二〇一〇では、石神井川など、重点十四水域を定めて合流式の下水道の改善を進めているところです。
 この合流式下水道というものの一点特徴は、雨天時に合流式下水道ということの持っている放水量を減らしませんと、合流式下水道というのは合流の欠点をさらけ出してしまうということであるわけでありますが、これについて、経営計画二〇一〇では、ちょうどこの決算の平成二十三年は中間点になるわけですけれども、どういうような取り組み改善を図ってきているのかお伺いいたします。

野村建設部長

 合流式下水道の改善対策には、雨天時の下水をより多く水再生センターに送水し、処理するための下水道幹線の増強や、降雨初期の特に汚れた雨水を貯留し、処理する貯留池の整備などがございます。
 これらのうち、下水道幹線の増強につきましては、平成二十一年度までにおおむね整備を完了してございます。
 貯留池の整備などについては、平成二十一年度に策定いたしました経営計画二〇一〇におきまして、雨天時に河川などへ放流される汚濁負荷量を削減するために、石神井川など十四水域を定めて対策を強化することとしてございます。
 主な取り組みといたしまして、経営計画の三年間の累計目標である貯留量、百二万立方メートルのうち、平成二十三年度末までに百一万立方メートルが完成してございます。

和田委員

 今の答弁の最後の方で、経営計画の三カ年の累計目標であります貯留量の百二万立方メートルに対して、百一万までもう達成をしているというようなことであります。
 こういうふうに、ほぼ計画を前倒しするような形ででき上がりつつあるというようなことは、下水道工事そのものが、地下でおおむねできるということもあって、地権者等との交渉もないといえばそうかもしれませんが、やはりその間、着実に計画を練って、そして効率的に工事を行うというような段取りも含め、東京都の下水道局のすぐれた一つの知恵なり工夫があらわれているものということで、評価をいたすところであります。
 ただいま答弁にもありましたけれども、石神井川もその十四水域の中に先ほど申し上げたように入って、重点的な対策を進められるべき水域でもございます。
 ところが、夏になりますと大変悪臭が漂いまして、これが通常、当たり前なんだというふうに付近の住民はずっと考えてまいりました。
 ところが、平成二十一年にあの悪臭事件が勃発したわけです。JR王子駅の南口というところになりますが、そこのトイレを原因とするという悪臭事件でありますが、これについて、どのような総括をされているのかお伺いいたします。

渡辺施設管理部長

 お尋ねの事案は、昭和四十一年に王子駅南口トイレが設置された際、排水管が誤って雨水放流管に接続され、石神井川に排水が流出していたものでございます。
 平成十年から十四年にかけて、首都高速道路の工事の際、接続がえの機会があったものの、改善されることなく、不適切な状態が約四十年間にわたり継続されたものでございます。この事案が問題となった後、下水道局の指導により、JR東日本は排水管を適切に接続する工事を行い、問題の解消が図られました。
 その後、石神井川の臭気対策を当局、建設局、北区及びJR東日本の四者が共同で行うことになりました。
 このうち、平成二十二年度から北区が石神井川の臭気対策実験を行うこととなり、下水道局とJR東日本は、平成二十二年度から二十三年度までの二年分の実験費用について、約五千万円ずつを負担し、実験に協力いたしました。

和田委員

 今の答弁を確認しますと、首都高速道路の工事のときに、誤って下水が接続したのを正す、直すという機会があったにもかかわらず、それをそのままに存続させて、今、お答えだと四十年間そのまま汚水の垂れ流しが継続していた。したがって、その付近でにおうのは当たり前の一つの風景になっていたというのは、四十年間垂れ流しになっていれば当たり前のことであります。
 そこで、たまたま王子駅南口の利用者が少なかったので、そのうわさがそれほど広がらなくて済んだのかもしれませんけれども、やはり、どちらにいたしましても悪臭が大きな事件になったのが平成二十一年、それから二十二、二十三年と、それぞれJR東が五千万、それから下水道局が五千万という費用をかけて、負担割合でこの悪臭除去に努力をしているということでありますが、原因者はどう見てもJR東であるのに、なぜその原因にかかわりのない下水道局が半額の五千万を払わなきゃならないのか。ここは全く奇異な話です。
 もともと高速道路の工事のときに直そうと思えば、JRの敷地の中なのですから、当然JRの資格の中で、トータル幾らかをかけて直せばいいのに、その後始末に、JRは当たり前で五千万円出すべきでしょうけれども、下水道局までそれに加担して五千万円払わなきゃならないというのは、全く納得ができません。
 しかし、これは過去のことですからともかくといたしましても、やはりこの種の問題が四十年間も放置をされていたということについては、大変付近の住人も怒っておりますし、北区当局も我々選出議員としても、大変、いまだに怒りと不可解さをぬぐえないところなのであります。
 この対応について、北区と下水道局がかかわるわけでありますけれども、最近の北区の公園河川の担当者によりますと、二十二年、二十三年の処理では、高濃度の酸素水によって、浮遊物でありますスカムというものの発生を抑制する方法をとったそうであります。
 それは当局から下水道局の方にも話があったと思いますけれども、多少の効果はあったようでありますが、しかし、この二十四年度になっては、その反省を生かして、パーフェクトじゃなかったようなので、水流発生装置を採用して、これで何とか、もう少し効果を上げたいということで、北区は、間もなく十一月ごろと聞いておりますけれども、このスカムの、そしてまた悪臭除去をスタートしようということであります。
 この問題なのは、浮遊物であるスカムというものを東京都の下水道局がある意味では協力をして、それを集めたものは処理場に持っていって協力していることで、二十二、二十三年、過ごしているようであります。
 したがって、その二カ年が終わったからといって、これを打ち切らずに、今年度以降、JRと東京都は五千万円ずつ出したという経緯もありましょうから、協力して、この対処策にはぜひ解決の方向に力をかしていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。
 トイレ排水管の接続の間違いが原因であったということであり、それが四十年間も続いたということは、北区にとっても大変恥ずかしいことでありますし、JRにとってもそうですし、東京都にとっても、関係する自治体としても、反省を大にしなければならないと思うんであります。
 そしてまた、合流式下水道の改善ということも重要であると言を待ちません。下水道局では、既に石神井川下流において、王子第二ポンプ所や王子西一号幹線、あるいは下水道局のもう一つの線であります堀船一号幹線を整備するなどというふうに、具体的に地域では精力的に進めているわけでありますけれども、王子西一号幹線、これは総事業費六十億円というふうに聞いておりますし、その事業の目的は、貯留池整備などをして、浸水被害の軽減を図るというふうになっているんでありますけれども、これの進捗状況並びに完成後の改善効果などについてお伺いいたします。

野村建設部長

 王子第二ポンプ所、王子西一号幹線及び堀船一号幹線の目的は、一つ目には、合流改善対策といたしまして、降雨初期の特に汚れた雨水を貯留するとともに、水の流れが滞りやすい石神井川から、水の流れのある隅田川へ放流先を変更すること、二つ目には、浸水対策として、雨水排水能力を増強し、一時間五〇ミリメートルの降雨への対応を図ることでございます。
 このうち、王子西一号幹線は、平成二十二年度に工事着手し、平成二十五年度の完成に向け、内径二・六メートル、延長約二・三キロメートルのトンネルを築造しております。
 完成後は、北区東十条、王子、豊島地区の浸水被害の軽減を図るとともに、石神井川への三カ所の吐け口からの放流がなくなることとなります。
 また、幹線をポンプ所に先駆けて完成させ、暫定的に雨水を約一万二千立方メートル貯留することにより、早期に浸水被害の軽減を図ることといたしてございます。

和田委員

 今のご答弁では、東十条とか王子とか、豊島地域の浸水被害にも有効であるということであります。
 それから、暫定的に雨水を一万二千立方メートル貯留することで、これまた浸水の効果があるだろうということでございます。
 どちらにいたしましても、大変低地に属する地域でございますから、これらの工事を確実に行うことによって、随分と効果が上がってくるというふうに思うところでございます。
 したがいまして、これからの工事の進みぐあい、二十三年度決算を前提にしながら、その勢いを増して、ぜひ進めていただきたいというふうに思うところです。
 同じく堀船一号幹線でありますが、これについても二十億円の事業費が想定されております。対象地域は、堀船、西ヶ原、栄町、上中里といった地域の雨水処理を主に政策課題としておりますけれども、これについての現状と完成後の効果について、同じくお伺いいたします。

野村建設部長

 堀船一号幹線は、平成二十六年度の完成に向け、内径二メートル、延長〇・七キロメートルのトンネルを築造するものでございます。現在、トンネルを発進させる立て坑を築造中でございます。
 完成後は、北区堀船、西ヶ原、栄町及び上中里地区の浸水被害の軽減を図ることができます。
 また、本幹線もポンプ所に先駆けて完成させ、暫定的に雨水を約二千立方メートル貯留し、早期に浸水被害の軽減を図ってまいります。

和田委員

 これまた具体的に場所を挙げて答弁をいただいております。堀船とか、あるいは西ヶ原とか栄町とか上中里とかいう、これまた同じように低地域でありますから、一日も早く対応策としての浸水被害を軽減できるような本管、ポンプ所に先駆けての完成が待たれるということでありますけれども、また、暫定的に二千立方メートルの貯留ということで、地域の保全のためにも、この完成は同じように急がれるということであります。
 最後になりますけれども、王子第二ポンプ所の完成は三十二年度というふうに二〇一〇年のこの本には書いてありますけれども、おおむね、これは百億円という事業費が計画をされております。地域は、王子とか東十条とか豊島地域というふうに大変広い地域を想定したポンプ所の建設でありますけれども、これについても同様の変化、効用についてお伺いいたします。

野村建設部長

 王子第二ポンプ所の完成によりまして、東十条、王子、豊島地区などからの石神井川への雨天時の放流がなくなることによりまして、石神井川の水質が改善されることとなります。
 また、王子第二ポンプ所には、降雨初期の特に汚れた雨水を貯留する施設が整備されることから、放流先である隅田川へ雨天時に放流される汚濁量が減少し、隅田川の水質改善が期待されるものでございます。
 さらに、王子第二ポンプ所の完成により、この流域の一時間五〇ミリメートルの降雨に対する治水安全度が高めることができるようになります。

和田委員

 先ほど幸田露伴の「水の東京」も引用させていただきましたけれども、近くにはもみじ寺という大変もみじがきれいなお寺があったり、そのところを石神井川、地元では音無川といっておりますが、それが流れてきて一つの風情をなしていました。
 しかし、そこが四十年間ほうっておいたための悪臭で大混乱になって、東京都も五千万、JRも五千万というような、そういうある意味では醜態を演じてしまったということであります。
 これから視点を前に据えて、今、答弁いただいたような幹線整備やポンプ所整備などによって、次の新しい景観形成に向かって、そして水のきれいな地域をつくるということで、下水道事業のさらなる発展を目指していただきたいというふうに思います。
 潤いのある水辺環境の創出、安心・安全のまちづくりといったような二〇一〇年の経営計画プログラムに沿った鋭意な努力を期待して私の質問を終わります。